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2013 1月号

特集 夢見る色彩
Focus on: Dreaming in Color

色に親しむことは、図工・美術教育の基本的な課題です。

学習指導要領においても〔共通事項〕として「形や色などを基に自分のイメージを、持つこと」が求られています。けれども、「色とは何か」という素朴な疑問に答えることは簡単ではありません。

例えば、普段、私たちは客観的な「赤」という色があらかじめ存在すると思い込んでいます。これは、科学的な色彩観が反映した見方であると言えるでしょう。けれども、こうした科学的な認識は、ある一定の条件のもとで色彩を測定した結果に過ぎません。

私たちが、生活世界で認知する色彩は、様々な条件の中で、相対的に存在しています。つまり、実際には「赤」という色は、背景の色や隣り合った色彩により、その性質が異なって認識されています。

また、色彩の認知・認識は、眼球の仕組みをはじめとする生理的構造とそれを伝達し認識する神経や脳のシステムが関与しています。さらに、色彩は常に個人の感情や情緒を伴って認識されることから、色彩を個別の課題として捉える視点も必要となります。

加えて、古来より、民族によって、偏った色名の分布が見られるように、色彩は民族、文化によって生成された文化的な現象である面もあります。

以上のようなことから、色彩を学ぶことは、様々な分野に渡っています。けれども、このような背景を知らずとも、子どもたちは、色と遊ぶことを楽しみ、色彩によって豊かな感性を育んでいきます。色彩には、子どもの夢見る力を引き出す特別なパワーがある気がします。

この号では、色彩が子どもの造形活動に果たす意味やその豊かさについて考えてみたいと思います。

A basic theme in art and craft education is fondness of color. Expressing an image formed in one’s mind through color and form is one of the specific needs stated in the government guidelines for art education. However, the question “what is color” is not easy to answer. For example, although it is possible to put together a myriad of colors on a computer monitor, color recognition and interpretation for the human being is a complex and involved process of messages being sent from the eyeball through the nervous system to the brain. However, aside from understanding color recognition from the general physiological viewpoint, we also need to view color in respect to the feelings and emotions of the individual subject. Furthermore, there are physical reasons why colors appear as they are objectively apart from human ideas. Put simply, if a pigment which corresponds to one particular color does not exist, we cannot recognize that color. Another aspect of the problem of color in art is that of culture. Colors are labeled using language and the words used to describe colors are disseminated through the histories of various cultures and ethnicities. Considering the various angles from which color can be theorized about, coloration as a subject is not an easy one to learn. But, regardless of the theories concerning color, children develop a rich sensitivity to the environment through playing with colors without knowing about the theory. You could say that there is a special power in color to draw out dreaming and imagination in children. According on this issue, we would like to consider the richness of colors and how they effect childrens’ creativity.

1月号 美育インタビュー

生物学者・青山学院大学教授 福岡 伸一さん
子どもの期間というものは、環境の中から生きるために必要なことを学ぶための時間です。そして子どもの期間は、「争いよりも遊ぶこと」、「警戒するよりも好奇心をもって探索すること」、そして、「働くことより、むしろなまけること」というように非生産的なことに関心を向けられる時期なんです。その時代が長ければ長いほど環境の中から様々なことを学べます。実はこのことが人間の知性を育んできたと言えます。要するに子どもの時間というのは、生物にとって宝物の時間なんです。ですから、「早くオトナになりなさい」というのではなく、できるだけ長い時間子どもでいられるような教育こそが、生物学的には、よい教育だということになります。…続きは本誌で

目次

特集 夢見る色彩

1 美育インタビュー 
生物学者・青山学院大学教授 福岡 伸一さん…6  

2 特集 夢見る色彩 
図画工作・美術教育における色彩教育を考える…茂木 一司…12
鑑としての色…………西村 徳行…16
色のカケラが誘いだす、こども達の世界………山成 美穂…20
葉っぱが奏でる「いろ」…佐藤ひろみ…22
幼児の絵と色彩心理……鈴石 弘之…24 

3 街色考現学…………26
ナビゲーター:有福一昭
荒 文香+伊部玉紀+河原賢一+
塙 萌衣+ミノオカ・リョウスケ

  街色考現学海外編……30
SENEGAL セネガル……増田三恵子
CHINE   中 国……王  節子
DEUTSCHLAND ドイツ…加藤 貴子  
UNITED KINGDOM 英 国……Jonnathan Garner

4 連載 図説 子どもART学 
第10回 夢見る色彩…辻  政博…32

5 児童画展ギャラリー……34

6 連載 授業ライブ 第3回 
未来の携帯電話をデザインしよう!〈3年生〉
埼玉・八潮市立八條中学校……浅見 俊哉…36

7 授業研究 
幼児 作って遊ぶ ~俺達海賊だ~………田中芙美子…38
小学校低学年 しゃぼん玉にのって……小田美千代…40
小学校中学年 ひみつきち 野川で見つけた!……河野  路…42
小学校高学年 「風」をレリーフで表現する………細内 俊久…44
中学校 人の心を動かす形………山崎 正明…46

8 連載 <美術/教育>の扉をひらく
-新しい社会文化システムの中へ-
第18回 <美術/教育>の更新(上)
-グローバル時代の「芸術教育への再投資-」
……長田 謙一…48
9 東日本大震災 復興日誌 第10回
………小野 浩司……52

10 新刊紹介
『手で見る北斎 冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』
岩崎 清 著 タクタイル・ヴィジョン 監修
……編集部……54

11 美育ニュース…………55
「夢リンゴの木」を描く 子ども教育支援活動報告
……水島 尚喜……58




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